「九州全県縦断マラソン」を走ってきた(5-6日目)

【5/3・5日目(合計325km)】
前日は早めに寝ることができたので、4時半スタート。
小野さんの友人で、スーパーランナーのソノダさんがスタートから同行してくれた。
彼はサルの着ぐるみでサブスリー、サブナイン(サブテンじゃなくて!)の記録を出す超人で、2014年は50人参加して4人しかいない沖縄一周サバイバルラン(72時間400kmエイドなし!)の完走者でもある。
マラソンジャンキーに対してマラソンモンキーというか、野生に戻りつつあるとびきりの規格外だ。

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一昨日、1時間しか寝てないのに北九州から日田市まで87km走り、宿に着いたのは深夜0時半。
そこから2時間仮眠して、我々と一緒に走るという。
さらに、この日のゴールは佐賀市だが、そこから福岡に移動し、夕方は飲む約束があるとのこと。
「寝ないと時間がたくさん使えるんですよ」とか淡々と喋るから、あれ?僕が長年使っていた物差しは狂っていたのか?という気分になる。

ソノダさんの話で印象的だったのは、膝の痛みを訴えるミタニンに対して「そこが痛くなるまで追い込んだことなったでしょ?だから痛むんです」というもの。
レベルを上げて追い込めば痛くなるのは当然。
でも、痛いからと止めていたら次には進めない。
当たり前だが、ソノダさんでも、僕でも痛い時はたくさんある。
しかし、次に進んでしまえば、痛かったのは弱かったからだと判る。
無理しても構わない痛みと、無理してはいけない痛みの違いも判るようになる。
そんな気付きを何十回も繰り返して、強いランナーになるのだ。

僕が印象的だったのは、彼が「ウルトラって結局はメンタルなんですよ」と言った時、小野さんから「サルがメンタル語っても説得力ねーよ!」と突っ込まれたこと。
この時に僕は、これが同じフィールドに立つ人たちの遠慮のないコミュニケーションなんだと理解した。
小野さんは超気配りの人だが、極めて近しい人には遠慮がない。
ソノダさんと小野さんの信頼感が素直に羨ましかった。

他にも、前後の脈略は忘れたけれど、小野さんがソノダさんに対して「へぇー、走るのがお好きなんですねぇー」と小馬鹿にしたようにツッコむので、思わず「アンタが言うか!」とツッコミを入れてしまった。
それほど小気味良いツッコミで、だからこそ二人の信頼感がちょっぴり羨ましかった。

でも次の日、僕が何かを語った時、小野さんが昨日同様「へぇー、走るのがお好きなんですねぇー」と小馬鹿にした感じで言ってくれ、僕は満面の笑顔で「えぇ、とっても♪」と答えた。
僕はまだ小野さんやソノダさんのレベルにはほど遠いけれど「オマエもこっち来いよ」と誘われたようで、泣きたいほど嬉しかった。

ソノダさんは昨日からもの凄い距離を走っているからだろう、足の裏が痛いと言っていて、休憩のたびに足の裏を揉んでいたが「僕が弱いからです」と淡々としていた。
小野さんも同じフィールドに立つ彼にテーピングしようとは言わなかった。
おそらくソノダさんは「これでさらに強くなる」と考えていたのだろう。
痛いから走らないとか言っている人とは目線が違うのだ
このメンタルの強さは長い競技歴から獲得したのかと思ったら、彼も小野さんの影響で走り始めており、まだ数年とのこと。
小野さんもそうだが、ウルトラマラソンの強者はメンタルがとても強い。
先のソノダさんの「結局はメンタル」という指摘にも説得力があった。

この日はありがたいことに雨。
終日、霧雨が降ったり止んだりで、僕にはとてもありがたかった。
朝から着々と距離を稼ぎ、1時間ほど走ったところで福岡県に入った。
そのまま進めば100kmちょっとでゴールできるけれど、全県縦断のためには佐賀県と長崎県を通らなければならない。

そして9時前、寂しい道を走っていると向こうから見覚えのあるランナーが…
昨日で終了予定のサワちゃんがおかわりランに来てくれたのだ!
「昨日、皆さんにキチンとお別れが言えなかったし…」とのこと。
望外の出来事でとても嬉しかった。

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そして、この日はこの企画発症の地、ということもあり、同行ランや応援エイドがとても多かった。
サワちゃんの友人が多くて、この後2日も同行してくれたヒロミさんや、最終日まで一緒だったタナカさんもここで合流。
赤鬼コスプレのランナーなども加わって10人くらいの大所帯になった。
日田市から久留米市を抜けて佐賀市なので、コンビニも多い。
応援エイドもある。
霧雨で気温が上がらない。
大人数でお喋りしながらのランなので楽しい。
5日目にも関わらず気持ち良く進むことができた。

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なかでも51kmでスーパーサイヤ人のコスプレをし、仙豆を用意して待っていてくれたババさんが最高だった。
ちゃんと中身が入っていて、食べてみたら枝豆だった。
一粒で完全回復とまではいかなかったが、ここで味噌汁や珈琲、旨いイチゴなんかも出してくれて、大いに楽しんだ。

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全てが順調のように感じられたが、ここでトラブル発生。
50kmを過ぎた辺りからミタニンの様子がおかしいと思ってたら肉離れを起こしたらしい。
走れないというので少し歩いては走り、走っては歩きしていたところ、残り3kmになってオフィシャルカメラマンのオカモトさんが合流してくれた。

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この日以降、BD-1(写真手前のバイク)に跨がり、我々の前や後ろを進みつつ、たくさんの写真を撮ってくれた。
ここから一気に写真の質が上がり、数が増えるのは、彼女のおかげだ。

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ちなみに、この写真でミタニンが弾けているのは、完全な空元気。
つい先ほどまで歩いていたけれど、悲壮感漂う姿を撮られるのが嫌で元気に振る舞っている。
でも、それはとても重要。
心から笑っていれば、ツラさは忘れられるのだ。

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そして16時には佐賀市のホテルに到着。
68kmを11時間半だった。
ここのホテルはユニットバスのみだったので、地元ランナーの方々がスーパー銭湯に連れて行ってくださった。
身体をしっかり伸ばせるし、水風呂でアイシングもできる。
これは本当にありがたかった。

晩ご飯の会場では地元ランナーが小野さんのために鍋島を3種類用意しており、僕たちもご相伴させていただいた。

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最初は睡眠時間が削られるので20時にはお開きにしようと言っていたが、終ってみれば21時半。
コンビニで朝ご飯などを買い、ホテルに戻って寝る頃には22時半くらいになっていた。
とても楽しく、弾けている間は良かったけれど、5日目の疲労は深く、泥のように眠った。

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【5/4・6日目(393km)】
この日は佐賀市から佐世保市までの70km弱。
ここを超えれば残り2日は50km台なので終わりが見える。
4時に起きたときは、疲れと睡眠不足で吐気すら感じたが、 ここが山場だと自分に言い聞かせ、朝5時にスタートした。
この日はヒロミさんとタナカさんがスタートから一緒なので元気が出る。
もちろん疲労の深さは隠せないけれど。

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1時間も走っていると、やはりミタニンが調子悪そう。
前日の後半が歩きになったことを悔やんでいたのだろう「先に行ってください。必ずゴールまで行きますから」と隊列を離れた。
でもこの後もFBのメッセージを送り合い、コースなどの情報を送り、励ましながら、離れていてもチームであることは忘れなかった。

メッセージ

その後、ニシジマさんが「おかわり〜♪」と言いながら合流してくれ、徐々に女性比率が高まった。
早速、ミタニンにニシジマさんが来てくれたよ!と送る。
モチベーションが上がるかな?と考えたのだ。

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46kmくらいまで進むと、有田陶器市を突っ切るのが最短だったので、気分転換に行ってみた。
そこで嬉野茶を飲み、デコポンの生ジュースを飲んでいると、小野さんの親友ゴリさんにばったり。
一緒にいた人は銀座「小十」のマネージャーとのことで、どこで何が繋がっているんだ?と混乱してしまう。
小野さんと一緒にいるとこんな楽しいハプニングばかりだった。

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そして有田陶器市を抜け、50kmくらいで長崎県に入った。
既に福岡県は一度、入って出ているので、これで全県踏破。
ゴールはまだ先だけど、全県は踏破したんだ!と感無量で、長崎県のカントリーサインの下で小野さんと抱き合って喜んだ。

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それからしばらく進むとまた女性の同行ランナーが増え、一人で進んでいるミタニンに「ハーレムなう」と写真を送って励ます。

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この日は夕方になっても暑さが続き、長崎に入ってから微妙なアップダウンが続いた。
地元ランナーは「ここからは坂ないですよ!」と言うが、これって坂だよね?というのを3回くらい越えた。
そしてやはり、この日も残り3kmになって暑さでダウン。
九州でしか売られていない、袋に入ったかき氷をもらって、一袋ガリガリと食べたらやっと身体が冷えた。
この氷は冷却効果がとても高くて、次の日も助けてもらった。
やはり身体を冷やすのに最も効果があるのは氷なのだ。

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身体が冷えると動けるようになるのはいつものことで、残り3kmは走り切ることができた。
そして、佐世保ではシリウス閣下が待ってくれていた。
彼女は旦那が海自なので、全国の基地がある街を転々としており、以前は江田島にも住んでいた。
現在は佐世保在住なのだ。
自衛隊限定ドリンク、元気バッチリ2を用意してくれていたので、この日の完走記念に皆で飲んだ。

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ホテルに浴場はないとのことだったので、どこかの銭湯に入ろうという話になり、地元ランナーが教えてくれたのが「徳の湯」。
入口すら判らなく、1階の人に訊いたくらいで、薄暗い階段を上った先に入口があった。
公式PDFから雰囲気が伝わる。さり気なく「戦闘が庶民の娯楽」とか、佐世保市民恐るべし!な記述が…)

早い時間だったし、がら空きかな?と思ったけれど、どんなお仕事なのか知りたくない感じの人がたくさんで、マッチョでドレッドヘアの兄ちゃんとかもいる。
小野さんと「ここってヤバくね?」とアイコンタクトして、言葉少なに風呂へ浸かり、身体を洗ってそそくさと上がった。
淡々と身体を拭いているとドレッドの兄ちゃんが「すんません。この辺で佐世保バーガーの旨い店教えてもらえませんか?」と訊いてきて「僕らも広島からなので判らないんだ」と答えると、愛嬌のある笑顔で「何だ、僕らと一緒ですね!」と笑いやがった。
なんだお前、いいヤツなのかよ!と心の中でツッコんだりした。

それからしばらくしてミタニンもゴールし、お互いの健闘を讃え合った。

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晩ご飯は「さかなや道場佐世保山県店」で、この日は大人数だったので、大型店しか席が押さえられなかった。
10人以上の宴会で、有田の陶器市でお会いしたゴリさんと「小十」のマネージャーも一緒。
ここを越えることができれば完走できると自分に言い聞かせていただけに、ここにきてやっと完走できるのではないか?と思い始めており、大いに盛り上がった。

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この日は68kmを13時間で走ったが、朝から同行ランしてくれたタナカさんは、自身の最長記録50kmを軽々と越えてしまった。
スタートした時は途中で離脱すると言っていたけれど、皆で一緒に乾杯しようよ!と誘うと「わたし、最後までいく!」と宣言。
何のことはない、僕がヘロヘロになった後半でも疲れた様子を見せず、最後まで軽快な走りだった。
僕やミタニンだけでなく、他の人たちも楽しみながら自らの過去の限界を越えていた。

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